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【燻製の話】
2024.08.30

かずさスモークの香りを支える技術とオーガニックへのこだわり

皆さん、こんにちは。いつもは燻製の魅力や活用法についてのお話しが中心ですが、今日は少し趣向を変えて、燻製の専門的な側面に深く迫ってみたいと思います。燻製の香りに秘められた科学や、かずさスモークがどのようにしてその品質を保ち、製品を提供しているのかを徹底的に掘り下げます。


燻製といえば、食材にスモーキーな風味を与えることで、料理を一段と美味しくする技法として知られています。燻製の歴史は長く、その起源は保存技術としての役割に遡ります。しかし、現代ではその香りや風味が持つ魅力に注目が集まり、多くの料理人や家庭のキッチンでも積極的に活用されています。

しかし、この「スモーキーな香り」とは一体どのようにして生まれるのか? そして、その香りはどのように私たちの嗅覚を刺激し、味覚体験を変えるのか? 今日は、そんな燻製の「香り」にまつわる科学の世界を探求しながら、かずさスモークの製品がどのようにしてその香りの品質を保ち、どんなこだわりでお客様に商品を提供しているのかをご紹介します。

燻製の基本「温度と時間」
燻製の香りを語る前に、まずは燻製自体の基本的なプロセスを簡単におさらいしましょう。(この部分は様々な方が情報発信をしているので簡単に…)

燻製を行う際、燻蒸の前に塩漬け、塩抜き、乾燥といった工程が施されますが、味付けという意味だけではなく、もちろんこれには理由があります。

塩漬け
食材に塩を浸透させることで、水分活性を低下させ、微生物の増殖を抑えます。塩は浸透圧を利用して水分を引き出し、保存性を高めると同時に、食材に味を付けます。また、塩分子はタンパク質と結合し、風味を引き立てる効果もあります。

塩抜き
塩漬けで過剰に塩分が入った部分を洗い流し、適度な塩味を調整します。この工程は、浸水や流水などで余分な塩を取り除き、食材の風味を整えます。

乾燥
燻製前に食材の表面の水分を除去し、煙が均一に浸透するようにします。乾燥することで、食材の表面にペリクルと呼ばれる薄い膜が形成され、燻製中に香りが定着しやすくなります。また、乾燥は微生物の活動をさらに抑制する役割も果たします。

燻製には大きく分けて「冷燻」「温燻」「熱燻」という3つの手法があります。これらは燻煙温度や時間によって分類され、それぞれ異なる香りと風味を生み出します。

冷燻(Cold Smoking)
20〜30℃という低温で行い、数時間から数日間かけて食材を燻します。この方法は保存性を高めるために古くから使われており、スモークサーモンやプロシュートのような製品に適しています。冷燻は穏やかな香りが特徴で、食材本来の味わいを生かしつつ、スモーキーな風味を与えます。

温燻(Warm Smoking)
40〜60℃の温度帯で数時間燻製を行います。こちらは、食材により強いスモークフレーバーを与えつつも、じっくりとその内部まで味を染み込ませる方法です。チーズやナッツ、さらには液体調味料にも適用されることがあります。

熱燻(Hot Smoking)
70〜120℃で行われ、食材を調理しながら燻製を施します。肉類や魚介類に適しており、短時間で強いスモークフレーバーが得られます。バーベキューなどで使われるこの手法は、特に厚切りの肉類に最適です。


燻製の香りを生み出す化合物
燻製の香りは、ただ「スモーキー」といった単純な一言では片づけられません。燻製香の基盤を成す化合物はグアイアコール(Guaiacol)といわれています。木材中のリグニンが熱分解されることで生成されるこの化合物は、燻製特有のスモーキーで甘い香りを与えます。
燻製の深みを生み出しているグアイアコールは燻香の主成分として重要な役割を果たしており、かずさスモークの燻製調味料においても、測定管理の主軸となっています。しかし、この香りを単独で捉えてしまうと、自然でまろやかな燻製香にはほど遠く、美しい燻製香とは言えません。かずさスモークでは、サクラチップにこだわりを持っていますが、サクラチップの燻製はグアイアコール以外にも多くの化合物が生成されます。

シリンゴール(Syringol)
グアイアコールと並んで重要なフェノール化合物で、甘くてスモーキーな香りを提供します。シリンゴールは特に桜の木から多く生成され、燻製の香りを一層豊かにします。

ユーゲノール(Eugenol)
クローブに似たスパイシーで甘い香りを持つ化合物で、桜チップを使った燻製に独特のアクセントを加えます。

4-メチルグアイアコール(4-Methylguaiacol)
より強いスモーク感と甘さを持つ化合物で、燻製特有の芳香を提供します。

バニリン(Vanillin)
バニラのような甘い香りを持つフェノール化合物で、桜チップを使用した燻製に繊細な甘みを加えます。

フルフラール(Furfural)
甘くてナッツのような香りを提供し、燻製された食品に微妙な甘みと温かみをもたらします。

かずさスモークの製品は、サクラチップの香り成分が丁寧に引き出されているため、類似品にはない特別な風味を提供します
我々は、これらの成分が調味料の香りにどのように影響を与えるかを理解することで、燻製の魅力をさらに深く追求し、お客様により質の高い燻製体験を提供できるものと考えています。

ガスクロマトグラフィーで香りを数値化
燻製の香りは非常に繊細で、製品ごとにその品質を一貫して保つことが求められます。かずさスモークでは、ガスクロマトグラフィーを用いて、香り成分を数値化し、製品の品質を厳密に管理しています。

ガスクロマトグラフィーとは、揮発性の化合物を分離・分析するための技術で、燻製の香りに含まれる各種化合物の濃度を測定することができます。これにより、各製品が持つ香りのバランスが常に最適であることを確認し、製品ごとの香りの一貫性を維持することが可能となっています。消費者に提供される燻製調味料が、常に最高の品質であることを保証するために、この管理は欠かせません。

レトロネーザルと呼ばれる嗅覚経路
燻製の香りを語る際に見逃せないのが、私たちの嗅覚がどのように香りを感じ取るかという点です。特に、食事中に感じる香りは、鼻から直接吸い込むだけではなく、レトロネーザル経路、つまり口腔から鼻腔への逆行経路を通じてもたらされることがあります。

レトロネーザル経路とは、食べ物や飲み物が口の中に入った際に発生する香りが口内から鼻に向かう経路のことを指します。この経路の香りは脳に伝達される際に「味」と認識されるので、この経路を通じて私たちは食事中により立体的で複雑な「食の風味」を感じることができます。燻製調味料を使用した料理では、特にこの経路を通じて燻製の香りが強く感じられ、食事全体の風味を高める効果があります。

例えば、燻製しょうゆを使った料理では、口に含んだ瞬間、燻製の香りがレトロネーザル経路を通じて鼻腔に広がり、その後にしょうゆの旨味が口の中で感じられることで、料理全体に一体感が生まれます。このように、燻製の香りは私たちの味覚体験において非常に重要な役割を果たしているのです。

燻製材が決める香りの個性
燻製の香りを決定するもう一つの重要な要素は、使用する木材チップです。燻製材の種類によって、最終的な香りや風味が大きく変わるため、チップ選定こそが燻製の面白みとも言えます。

ヒッコリー(Hickory)
強いスモークフレーバーが特徴の燻製材で、ベーコンやバーベキューなどの肉類に最適です。香りが強く、燻製の風味をしっかりと感じられるので、肉料理にはこちらを使うことが多いです。

オーク(Oak)
バランスの取れた香りを提供するオークは、肉類や魚、さらにはチーズやナッツにも使用されます。ウイスキーの樽熟成でおなじみの、リッチで深い香りが特徴です。

リンゴ(Apple)
優しい甘さとフルーティーな香りが特徴で、鶏肉や野菜、チーズに適しています。燻製の風味を控えめに感じさせるため、初めて燻製を試す方にもおすすめです。

桜(Cherry)
桜のほのかな甘みとフルーティーな香りは、牛肉、豚肉、鶏肉、魚にもよく合ううえ、日本人の繊細な嗜好にぴったりの香りです。繰り返しになりますが、かずさスモークはこのサクラチップに特別なこだわりを持っており、健康的で自然な燻製を提供するため、有機JAS認証を取得した「オーガニックスモーク(R)」を使用しています。オーガニックスモークは高品質で安心できる調味料を生み出すための基盤となっています。

世界初のオーガニック認証
かずさスモークは2014年には燻製業界として世界で初めてオーガニック認証を取得しており、この認証は使用するすべての原材料が有機栽培されたものであることを保証するとともに、燻製プロセスに使用される設備や環境にも厳しい基準が設けられていることを意味します。
オーガニックへの取り組みは、単なる流行ではなく、健康と環境に配慮した持続可能なライフスタイルをサポートするもので燻製調味料に必ずしもオーガニック認証は必要ではないかもしれません。私たちのオーガニックへの取り組みは、お客様に安心で自然な香りと風味を提供し、燻製の未来を明るくすることです。かずさスモークの製品を選ぶことで、日常の食事に安心をもたらすことが出来れば幸いです。


燻製の香りは、その背後にある科学と技術によって支えられています。かずさスモークの燻製調味料は、この香りの力を最大限に引き出すために、さまざまな工夫と最新技術が取り入れられています。次回、かずさスモークの製品を手に取った際には、その奥深い香りと、その香りがもたらす味覚体験に注目してみてください。

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