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【燻製の話】
2024.08.31

ピックル液とソミュール液の違い

かずさスモークのお仕事は液体燻製専門ですが、皆さんから見るとやはり「燻製屋」です。よく「この場合はどうやって燻製するの?」とか「ハムやベーコンの作り方は?」といった質問をよくいただきます。今では液体燻製を扱う仕事をしていますが、私は10年前まで料理人で、実際にハムやベーコン、ソーセージなどの燻製を作っていたので、直接会社にいらっしゃってくれたお客様には、こうした質問にもちゃんとにお答えさせてもらってます。
むしろ趣味の燻製ではなく、物理化学的な視点から燻製を捉えることが多いので、そういう視点でお話しすることが多いですが…(笑)。

今日は、燻製のプロセスでの「塩漬け」についてお話ししたいと思います。初心者の頃、私自身もいろいろと調べて迷った経験がありますので、その経験を共有させてもらいますね。

燻製のプロセスでは、ピックル液やソミュール液といった塩水溶液が使用され、多くの人がこれらを異なるものとして説明しています。乱暴な言い方ですが、本質的にはぶっちゃけ大きな違いはありません。
どちらも食材の保存性を高め、風味を加えるための手段であり、基本的な原理は同じです。これは、塩の浸透圧によって食材の水分活性を低下させ、微生物の増殖を抑え、同時に味を付けるというものというだけです。

ピックル液もソミュール液も塩蔵の一環として使用され、食材に塩分を均一に行き渡らせることで保存性と風味を高めます。また、塩がタンパク質と結合し、食材の風味を引き立てる効果があるため、これらの液体は食材をより美味しくする手助けをします。

溶液にはスパイスやハーブが加えられることが多く、これにより肉や魚の臭みを消し、さらなる風味を与えることができます。塩蔵の方法として手で直接塩や香辛料をすり込む方法がありますが、水溶液を使用することで、塩分が均一に食材に行き渡り、ムラなく仕上がります。

歴史的な背景
ピックル液やソミュール液は、実は古代から食材を保存し、風味を増強するために使われてきました。ピックル(漬物)という言葉自体は、16世紀にオランダ語から英語に借用されたもので、元々は塩水や酢に漬けた食品を指していました。古代メソポタミアでは、ピックリングが食品保存のために初めて導入され、その後、ヨーロッパやアジアなど世界中に広まったといわれています。当時はピックル液に必要な塩の量を正確に計測するのが難しかったため、「卵が浮くくらいの塩を使う」といった方法が使われていたそうです。秤がない時は便利ですね。
さらに、ピックル液やソミュール液に使われる香辛料やハーブには、風味を付けるだけでなく、抗菌作用もあることがわかっています。
ディルやニンニク、クローブなどは古くからピックル液に使用されてきましたが、これらの成分が微生物の増殖を抑える効果があることが確認されています。

燻製における実際の応用
燻製では、ピックル液やソミュール液を使うことで、食材に均一な塩味を付け、燻製過程での風味付けがより効果的になります。特に、大きな肉塊や魚を燻製する際には、この手法が風味の均一性を保つために有益です。

手で塩や香辛料をすり込むことの重要性
一方で、塩や香辛料を手ですり込む方法には独自のメリットがあります。手ですり込むことで、食材の状態を直接感じ取ることができ、その日の食材のコンディションに合わせて調整ができるます。私自身も、飲食店時代は手でしっかりと塩をすり込むことで、食材の繊細な変化を感じ取り、最高の仕上がりを実現することができた経験があります。
すり込みのテクニックは、磨いておく価値はあります。技術が向上することで、均一に塩や香辛料を行き渡らせることができ、結果として燻製の仕上がりが一段と良くなります。大きな肉塊や魚を扱う場合でも、ムラがなく、美味しく仕上がるまで技術を磨くとワンランク上の燻製になることでしょう。

燻製や保存食を最高の状態に仕上げるために、これらの技術を適切に活用しましょう。

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