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【燻製の話】
2024.09.02

燻製における「ペリクル」とは?

突然ですが、ペリクルってご存じですか?

燻製の専門書でもあんまり見かけない言葉ですが、燻製愛好家の方にはぜひ知っておいて欲しい「ぺクリル」という存在。 ペリクルは、燻製の良し悪しを左右する重要な要素で、食材に燻製の香りをしっかりと定着させるために欠かせないものです。
Webで見つけた情報では僕とはちょっと違った見解を記してる方もいるのですが、やはり燻製専門で生きてきてるので、自分の見解も発信しておきたい!液体燻製調味料とは全く関係ないのですが、ここではペリクルについて詳しく解説したいと思います。

燻製がうまくいくと、その表面にプラスチックのような艶のある綺麗な「膜」ができますよね。僕は燻製に携わって30年以上になりますが、最初の5年ぐらいはそれが燻製成分だと思っていました。「フェノール系の樹脂が高密度になってラッピングされたかのようになったのではないか」とばかり思っていましたが、よくよく勉強してみるとそれが「ペリクル」と呼ばれるタンパク質由来の「膜」であったことがわかりました。

ペリクル(Pellicle)は、「薄皮」や「薄膜」を意味し、燻製を行う前に食材を乾燥させることで表面に形成される膜です。これにより、煙が均一に吸着し、深い風味が与えられると同時に、燻製中の過度な乾燥も防げます。

具体的には、タンパク質が熱や乾燥によって変性し、互いに結びついて凝集体を形成します。この過程で食材の表面が滑らかになり、煙がムラなく吸着できる状態になります。特に魚や肉など、タンパク質が多い食材で重要なプロセスです。この解釈から、豆乳を加熱することで表面にできる「ゆば」も、タンパク質が集まって形成される膜であり、私達が身近に確認できるペリクルといえるかもしれませんね。

植物由来の食材では、セルロースがペリクルの形成を補助します。セルロースは乾燥すると硬化し、表面に保護膜を形成するため、燻製中の煙の吸着を助けます。

ペリクルを効果的に形成するためには、乾燥環境の温度や湿度を適切に管理することが重要です。湿度が高すぎるとペリクルが形成されず、逆に乾燥しすぎると食材が硬くなりすぎるため、バランスが求められます。空気を循環させるとペリクルの形成が促進されます。

ペリクルを効果的に形成するためには

①乾燥時間
ペリクルをしっかりと形成するためには、十分な乾燥時間を確保することが重要です。乾燥が不十分だと、ペリクルが薄くなり、燻製中に煙がムラなく吸収されないことがあります。

②温度と湿度
乾燥環境の温度と湿度は、ペリクルの形成に大きな影響を与えます。理想的な乾燥環境は、低温で湿度が低い状態です。高温や高湿度の環境では、ペリクルが適切に形成されないことがあるため、これらの条件をしっかりと管理することが重要です。

③空気の流れ
乾燥中の食材には、十分な空気の流れが必要です。空気の流れが悪いと、食材の表面が均一に乾燥せず、ペリクルがムラなく形成されない可能性があります。燻製を行う場所では、風通しの良い環境を確保し、食材全体に均一な空気が行き渡るようにすることが求められます。

ペリクルがしっかりと形成された食材は、燻製中に煙を均一に吸収し、深い味わいを持つ仕上がりになります。燻製の過程で煙がペリクルに吸着し、その結果として食材全体にバランスの取れた風味が広がります。さらに、ペリクルは燻製後も香りを食材に閉じ込める効果があり、保存性を高める役割を果たします。

ペリクルは古代から燻製技法の中で自然に認識されてきたものです。北欧では寒冷で乾燥した気候がペリクルの形成を助け、保存性の高い食品を作り出すことに貢献しました。日本でも伝統的な干物において、ペリクルの形成が食材の保存性を高める重要な要素として認識されています。

ペリクルは、燻製において欠かせない要素であり、その形成が食材の風味や保存性に大きく影響を与えます。燻製を行う際には、ペリクルの形成をしっかりと行い、食材が最適な状態で燻製されるように工夫することが大事です。

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